バナナ茶漬けの味

東京でバナナの研究をしています

エンジェル

 

 ラジオネーム「全自動犬撫で機」。金のエンゼル銀のエンゼルに当たる方法ですが、湖に木のエンゼルを落とせばいいと思います。そうすると湖から神さまみたいなのが出てきて、お馴染みの「あなたが落としたのはどちら?」のくだりをやってくれるので、正直に「木のエンゼルです」と答えれば金のエンゼル銀のエンゼルをもらえます。なお、「金のエンゼルです」と答えてもふつうにもらえるそうです。

 

 

 ラジオネーム「おつかれサンバつかれタンゴ」。金のエンゼル銀のエンゼルに当たる方法ですが、日本全国のエンゼルの流通量を決めている全国エンゼル流通衛生組合連合会・通称全エン連に直接掛け合うのはいかがでしょうか。全エン連は金一封で金のエンゼルをくれるという噂です。銀のエンゼルのほうはどうすればもらえるのか、いろんな説があるようですが、どれもさいあくなのでここでは言えません……。

 

 

 ラジオネーム「フランクマウンテン」。金のエンゼル銀のエンゼルに当たる方法ですが、ふつうに買い続けていてもまず当たることはないので、いったんもう買うのをやめます。そうすると当然当たるわけがないのですが、当たらないのが当たり前、ん、それって当たるの当たらないのどっち?となってバグが発生するので、次に買ったときに当たります。

 

 

 ラジオネーム「フランクマウンテン」。金のエンゼル銀のエンゼルに当たる方法ですが、コンビニで買うときにクレジットカード決済を選んで、カードの向きを145回間違えるとバグが発生して当たります。ちなみに145は「チョコ」の145です。

 

 

 ラジオネーム「家賃千年滞納」。金のエンゼル銀のエンゼルに当たる方法ですが、どうしてもということでしたら私にお声がけください。必ずや当ててみせます。いま買えば必ず当てられる、という確信めいたものがあります。確信めいたもの、いや、これはたしかに120パーセント確信です。根拠はありません。ありませんよ。しかし、金のエンゼル銀のエンゼルが必ず当てられる、という確信に、根拠なんて必要でしょうか?

 

 

 ラジオネーム「キシリトール」。金のエンゼル銀のエンゼルに当たる方法ですが、結局は集中力の問題という気がします。僕は昔からほんとうに集中力がなくて、単語帳もぜんぜん続けられなかったし、本も数行読んだだけですぐに気が散って手の爪などをぼんやり見てしまうし、エンゼルも一度も当てられたことがありません。僕の姉は僕と比べてものすごく集中力があって、博物館などで売っている小さな化石を掘り出すキットを4時間連続でやっていられます。けれど、そんな姉でもエンゼルには一度しか当たったことがありません。世界は広いな、と思います。1日1つは必ず当てられるようなトッププレーヤーにもなると、集中力を示す逸話がすごくて、あるひとは豚汁に浮いた油を箸でつなげるやつを72時間ぶっつづけでやっていたそうです。たしかにすごいけれど、僕は、そこまでしてエンゼルに当たりたいとは思えません。

 

 

 ラジオネーム「フランクマウンテン」。金のエンゼル銀のエンゼルに当たる方法ですが、チョコを買いたい気分のときにチョコボールを買うと当たります。なぜなら、チョコを買いたいときにチョコボールは選択肢に入ってこないはずだから。チョコボールを買うのは、チョコボールを買いたいときだけ。だから、チョコボールを買いたいわけじゃないのにチョコボールを買ったらバグが発生して、エンゼルが当たります。
 今回はちょっと無理があったかもしれません。またバグを見つけたらご報告するので、よろしくお願いします。

 

 

 ラジオネーム「さいあくスリザリンでもいいや」。金のエンゼル銀のエンゼルに当たる方法、しばらく考えてみたけど疲れました。なんかもっと他にいいこと考えたいな、とも思ったけど、ふつうに生きてるなかでちゃんと考えなきゃいけないことってだいたい暗くて、だったらエンゼルに当たる方法のほうがまだましだな、と思ったので、とりあえずいまはまた考えてみています。なんかいい方法があったらいいけど、ほんとは地道に買い続けるしかないんじゃないかな。いろんなコンビニでひとつずつ買ってみるとか、逆にここだと決めたコンビニで買い占めるとか。ふつうに買って当たらなかったからって、バグとか、トンデモ理論とか、そういう変なのを集めてみるんじゃなくて、やっぱり当たらなくてもふつうに買い続けることが大切なんじゃないかな。でも、せっかくだしもう少し探してみます。いい方法が見つかったら、わたしもやっぱりうれしいし。

 

 

 ラジオネーム「「令和にもなって」なんて言わないで」。その生涯を通して金のエンゼル銀のエンゼルに当たり続けた男、古畑侍五郎 a.k.a. “ジ・エンゼル”。彼についてはその小説家としての側面が多く語られてきた一方で、“ジ・エンゼル”としての顔はこれまでほとんど参照されることがなかった。小学6年生のときに初めて金のエンゼルが当たって以来、53歳で世を去るまでに当たったエンゼルは、金が436個、銀が239個。フィクションだとしてもいささか過剰に思えてしまうほどの数字だが、現実に遺された何冊ものキャンパスノートを目の前にすれば信じないわけにもいかない。エンゼル1個につき1ページを割き、当たった日付、場所、何をしていたか、当たったときの感情、その日誕生日の有名人、……などが小説同様のチャーミングな語り口で記され、それぞれのページのいちばん下には実際に当たったエンゼルの切り抜きが貼られている。
 表紙に“The Angel”と記されたノートたち。これこそ、彼の“ジ・エンゼル”としての顔であり、記録である。
 架空の町「玄米町」を舞台にした一連の小説群と雑誌で15回ほど連載したエッセイのほかには表立った著作のない古畑侍五郎を知るうえで、これらのノートたちはかなり有効だろう。単にエンゼルに当たった記録として片づけてしまうにはあまりに収穫が多い。それはページをぱらぱらとめくっただけでも伝わってくる。我々は興奮気味に文章に目を落とす。たとえば、“The Angel Vol.10”のあるページ。

 

 2017年8月12日。おおむね曇り。
 前の日に雨が降ったこともあってちょっと涼しい日だった。8月なのにちょっと涼しくてうれしかった。3月のちょっと涼しい日と8月のちょっと涼しい日ではうれしさが違う。違うけれどどちらもうれしい。ちょっと涼しい日というのはいつでもうれしい。一年じゅうちょっと涼しければ、ずっとうれしい。実際にはとても暑かったりとても寒かったりする日があるわけで、一年じゅうちょっと涼しいというわけにはいかない。けれど、ちょっと涼しい、というのは気の持ちようのような気もしている。ものすごく暑いけれどちょっと涼しいとか、凍えるほど寒いけれどちょっと涼しいとか、そんな状況が想像できないこともない。いまにも倒れそうなくらいお腹が空いているけれどちょっと涼しい、とか、熊に追いかけられているけれどちょっと涼しい、とか、クラス全員が見ている前で跳び箱失敗したけれどちょっと涼しい、とか。今日も金のエンゼルが当たった。郵便局前のセブンイレブンに水を買いに行ったついでに買って、今日はちょっと涼しいから当たるかもなと思ったら案の定当たった。8月なのにちょっと涼しいことのうれしさと、金のエンゼルが当たったことのうれしさ、甲乙つけがたい。8月12日が誕生日のひと、徳川家光

 

 個人的にはあまり好きな文章ではなかったが、彼の創作にまたがるキーワードの1つである「涼しさ」について言及している点はたいへん興味深い。涼しいことのうれしさとエンゼルが当たったことのうれしさが甲乙つけがたいとは、どういうことなのだろうか。しかし、そうした我々の深読みを回避しているかのように、“ジ・エンゼル”の文章には捉えどころがない。意味なんてないようにも思えるし、実際そうなのかもしれない。
 あるいは、たとえば“The Angel Vol.6”のあるページ。

 

 2016年1月31日。曇り、かつ、寒い。
 庭の掃除。芝生の上に大量に転がっている食品サンプルを片づけた。去年と同じく、やっぱり多かったのは海老の天ぷら。これはまあ、食品サンプルの大定番なので納得の結果だ。次に多かったのは、おはぎ。これは意外だった。これまでほとんど見たことなかったし、食品サンプルの定番かといわれるとそんなこともない。でも考えてみれば、ノーマークだったものがランキングに食いこんでくるのはけっこう毎年のことで、それが今年はおはぎだったということだろう。去年はブロッコリーだった。海老の天ぷら、おはぎ、ハンバーグ、そば、……そのあとも片づけを続けていると、西側の隅っこでチョコボールの箱を見つけた。チョコボールの箱の食品サンプル食品サンプルの樹脂特有の質感は少しあるが、たしかにチョコボールの箱だし、開けられた。金のエンゼルだった。とうとうこんな形でも当たるようになってきたのか、と、うれしさ半分とまどい半分。まあでも、やっぱりうれしいですね。1月31日が誕生日のひと、香取慎吾

 

 この文章に関しては、ほぼ完全にフィクションである。古畑侍五郎の住んでいたところには庭などなかった。これがなんらかの隠語としての「庭」だったとすると我々の預かり知るところではないが、少なくとも、ページ下部に貼られた金のエンゼルには、食品サンプルの樹脂のような質感は認められない。
 もっといってしまえば、フィクションにしてもあまり深い意味のあるものとは思えない。やはり“ジ・エンゼル”の文章には意味なんてないのだと捉えるのがよいのだろうか。答えはわからない。ただひとつ、おそらく確実なのは、その生涯で信じられないほど多くのエンゼルに当たり続けた古畑侍五郎が、それでも毎回当たるたび「うれしい」と思っていたらしいことだ。

 

 

 ラジオネーム「さいあくスリザリンでもいいや」。わたし、エンゼルに当たる方法見つけました。でもこれってひとに教えられるようなものではないっぽくて、だから見つけたっていうのとはほんとは違うかもしれない。わたし、どうやらわかるみたいなんです。コンビニで並んでる箱を見れば、どれがエンゼルかわかる。透視とも違くって、ただ、あ、これだな、ってわかるんです。わたし自身つい一昨日気がつきました。エンゼルに当たる方法、なんかないかな、とぼんやり考えながらファミマに行ったときに気づきました。あれ、これじゃん、と思って選んだやつを開けたら金のエンゼルでした。もちろんたまたまかなと思ったけど、それから何軒かコンビニはしごして、同じように、これかな、と思って、その直感に従って買ったやつがぜんぶ当たりました。すごくないですか。でも、正直エンゼルに対してそんなに熱量のないわたしがこんな能力を持ってて、なんだか申し訳ない気もします。でも、エンゼルって当たるとうれしいんですね。

 

 

 ラジオネーム「フランクマウンテン」。金のエンゼル銀のエンゼルに当たる方法ですが、コンビニの棚の前で、“Angel”だったら発音的にエンゼルじゃなくてエンジェルじゃない?とつぶやくと裏面のボーナスステージに行けるというバグが発生するみたいです。この方法なら、めちゃくちゃ当たります。どうぞよろしくお願いいたします。