バナナ茶漬けの味

東京でバナナの研究をしています

2017-01-01から1年間の記事一覧

De Niro

はあ。疲れたね、なんか。 疲れたの? 疲れないよ。何にもしてないじゃん。 そうだな、疲れてないな、言われてみりゃ。 * アンタさあ、どうすんの? 映画。 うーん? どうするって? 今からなんか観に行く? 違うよ、映画どうすんのって。撮るんでしょ、映…

2017年よかったもの

2017年いいと思ったものを発表します。メモ程度ですが…… ・2017年一番印象に残っている色、映画『ムーンライト』のブルーです。 ・2017年一番かわいかったもの、フジロックでビョークが連発してた「アリガットゥ!!」です。 ・2017年最も良かった短編映画、『…

バナ男の人生

へえ、ご実家、バナナ園なんですか! すごい! 彼に出会った人はみな感嘆した。すごい! すっげえ! 大したもんだ! マジっすか! ヤバいっすね! へえ! ほお! グルーヴィ! 表現は様々だったけれど、みな一様に大きな声を上げ、身を乗り出した。日本に暮…

僕らとバナナ

我々の日常とバナナとの不思議な関係を巡るいくつかの語り。 木曜日のこと ホームで吉祥寺行きの電車を待っているときナオコから電話がかかってきた。アケミさ、今度の日曜って空いてる? アタシとユミとエリカちゃんでバナナ祭りに行こうと思ってるんだけど…

バナナ・ボム

店に警官がやってきた。私は法律書コーナーの埃をはたきではらっているところだった。 警察です、と彼らは言った。背が高く胸を張った男と、背が低いうえに猫背の男の二人組。内側にひどく窪んだ眼と、息も吸えなさそうな鉤鼻からは、正義感のかけらも感じら…

あこがれ

小学校に入り、学年が上がっていくにつれて、だんだん身の回りのあれこれが見えるようになってきた僕は、自分の住む町に少しネガティブな感情を抱きはじめた。もしかしたら自分の住むこの町は、この世界においても第一線級につまらない場所なんじゃないか。…

納涼について

暑い! あーあ。今年も失敗しました。今年もまた、僕らは、夏を僕らのものにすることができませんでした。今年もまた、浴衣姿で汗ばむあの子や、ぬるくなったサイダーや、ほかに誰も乗っていない電車の窓から見上げる入道雲を、僕らは掴み損ねてしまいました…

『ひよっこ』について

『ひよっこ』(http://www.nhk.or.jp/hiyokko/)、ねえ。良いですよねえ。最近の朝ドラじゃ一番じゃないかなと思うわけです。有村架純は作品に恵まれている感があるし、良い女優になってきた感もあります。 さて、このドラマの良さについていくつか考えたの…

写真について

へえ、俺の若い頃の話を聞きたいの? あ、そうなの、大学で研究してるんだ。うーん、じゃあ、今でもいい? じゃあ今から話しちゃうね。あ、お茶いる? あ、いらない? えっと、そうだなあ、何から話そうか。まずは、そうだなあ、当時の東京に暮らしてた俺ら…

遅刻はよくない、という話

遅刻はよくない、という話をしよう。 『プリーズ・プリーズ・ミー』 1963年春、ビートルズの一作目のアルバム。歌の内容は、だいたい「カノジョがどうしようもなく好きなんだ」や「キミはたまらないよ」なんてこと。ジャケットは、どこかのビルの吹き抜…

みんみん蝉

「絶対UFOが出る」って言いはる友だちと二人でめちゃめちゃはしゃいで遠くまで見に行った夏の日の帰り道

対話1

暑くなってきたねえ、最近。そうだなあ。もう夏なんだねえ。そうだなあ。 おいらもたまには外の空気を吸いたいんだけど、いいかねえ。いやー、よかないよ、なるべく我慢するようにしてくれよ。冗談だよ、おいらだってお前を困らせるようなことはしたくないよ…

コーヒーについての問題

僕:このコーヒーうまいなあ。 識者:そうかな? どうもコクがないように思えるけどね。それに、キミね、一口にコーヒーと言っても実にいろいろな種類があるのだよ。そもそもキミは、コップに一杯のコーヒーが作られるまでにどんな過程をたどっているのか知…

ちぢれ毛

ブックオフで谷川俊太郎の『二十億光年の孤独』を買った。 僕は文庫108円の「た」のコーナーにいた。おそらく谷崎潤一郎か誰かの本を探していたのだけど、谷崎潤一郎みたいな文豪かつヘンタイの本がそんな108円なんかで叩き売られているはずはなかった…

科学のすごさ

一般論としても体感としても科学の発展のスピードはすさまじい。僕が意味もなく上野公園を散歩している間に世の科学者たちはそれぞれの構想を練っているのだろうし、僕がちょっとかがんで靴ひもを結んでいる間にさえ、世界中のありとあらゆる研究室で何かし…

ことの次第

「うーんと、そう、ですね。そうです。高校に入学したのが5年前ですね。5年前の俺は高校に入学したら何かスポーツを始めたいなーなんて思っていて、でもサッカーとか野球とか、テニスも、あとバスケとかもそうですけど、中学生の時からやってないとキツい…

井の中

「『ラ・ラ・ランド』は観た? あれはとっても良い映画だったと思うんだ。たしかにあの映画の脚本には緻密さが足りない部分だったり、つながりが弱い部分だったりがあったかもしれないけれど、いくつかのシーンは涙が出るほど素晴らしかったし、その素晴らし…

壮大なこと

「たとえば今、こうやって2人で電車に揺られているじゃん。僕は右手、君は左手で吊革につかまって立っている。目の前には池田エライザがとっても健康的な格好で写った広告があって、そこからちょっと右に目を移せば、窓の外にはいかにも山手線沿いらしい景…

エレベーターにおける問題

どこに行こうとしていたのか覚えていないが僕はエレベーターに乗っていた。なにしろエレベーターだ、おそらく上か下に行こうとしていたのだろう。たとえば、地下2階で乗って最上階まで行こうとしていたのではないだろうか。朝、僕が地下2階で乗ったとき、…

僕がジョン・レノンをはじめてカッコいいと思ったときのこと

2000年、ビートルズのベスト・アルバム『1』が発売され、瞬く間に大ヒットした。日本国内だけでも20億枚も売れたというのだから、ビートルズ人気は本物だ。 2000年というのは実に懐古趣味な数字だ。モーニング娘。だとか、プレイステーション2だ…

悲劇について

今回はとっても悲しい話をしようと思います。 僕はとっても悲しいことに気が付いてしまったのです。それは世界中でコモンに起きている出来事でもあるし、一方で当事者ひとりひとりにとっては存在が揺らぐほどキビシイ話でもあるはずです。ダイエットについて…

スリッパ

ここ数年間というもの、僕ら一家は、冬を迎えるたびに家族全員で中型のマツダ車に乗り込んで、沼沿いのユニクロに行き、厳しい3、4か月を越すためのスリッパを買い占めていた。僕ら一家は4人構成だったが、なにぶん田舎のユニクロなもんだから、僕らが4…