バナナ茶漬けの味

東京でバナナの研究をしています

ホラーチャーハン(Horror Chahan)

 ものごとがもっとも美しい状態にある時間というのは存外短いものだ、という話の流れでナデヒコくんが鼻を鳴らしながら発したのが「百年経ってもパラパラなチャーハンがあったら、怖いだろ」という台詞だったが、ハミスケくんによると、百年経ってもパラパラなチャーハン、実際にあるらしい。ハミスケくんはそれを斎藤さんから聞いたという。斎藤さんがいうなら間違いなく実際に存在するのだろうが、そうなるとたまらないのはナデヒコくんである。

「なんだよ、百年経ってもパラパラなチャーハン、あるのかよ」

「あるって斎藤さんがいってたんだよ」

「斎藤さんは食べたことあるのかよ」

「ごめん、そこまでは聞けてないよ」

「今度会ったら聞いとけよ、食べたかどうか」

 たしかに斎藤さんが食べたかどうかは重要だ、とジゴロウも思った。実際にパラパラしていたのかどうか。あと、そのチャーハンがほんとうに百年経っていたのかも重要だ。斎藤さんのことだから何かしらの方法できちんと確かめたのだろうが、それにしたって百年というのは長い。パラパラかどうかという以前に、そもそも百年前のチャーハンが現存していること自体が奇跡だ。我ながらいいところに目をつけたと思ってジゴロウは話に入ろうとしたが(「斎藤さんはそのチャーハンが百年経ってるってどうしてわかったの」)、もうナデヒコくんとハミスケくんは昨日の国会中継の話へと移っていた。小学五年生の話題の移り変わりは、ときにジゴロウには速すぎる。