バナナ茶漬けの味

東京でバナナの研究をしています

2020年よかったもの

 2020年よかったものを振り返っていきます。



■よかった音楽

 

 

 2020年よかったアルバム10選、

 

  Phoebe Bridgers “Punisher”

  Moses Sumney “grae”

  Tame Impala “The Slow Rush”

  Playboi Carti “Whole Lotta Red”

  Haim “Women In Music Pt. III”

  Perfume Genius “Set My Heart on Fire Immediately”

  The Weeknd “After Hours”

  Fleet Foxes “Shore”

  Jacob Collier “Djesse Vol. 3”

  Waxahatchee “St. Cloud”

 

です。

 The WeekndやFleet Foxesは、(方向性はまるで違えど)2020年のサウンドトラックとしても機能しそうなところがある一方で、Moses SumneyやPlayboi Cartiみたいに自らを突き詰めていったようなアルバムもやはり魅力的でした。Moses Sumneyのファルセットは荘厳さすら帯びているし、Playboi Cartiはただフロウを聞いているだけでも楽しい。

 Phoebe BridgersやHaimやWaxahatcheeはまずもってメロディがいいので好きでした。Phoebe Bridgersなんかは詞もすごくいいみたいなので、はやく英語を勉強してわかるようになりたいです。A、B、C、D、E、F、G、……

 Mura MasaとかTHE 1975とか、あとDua Lipaとかもそうなのかもしれないけど、ちょっとダサい音色やリズムをうまく料理する流れが来ていたようにも思います。THE 1975でいうとIf You're Too Shy (Let Me Know)だったり、Dua LipaでいうとDon't Start Now(あの曲の1:03あたりの2連ドラムとかすごくいいですよね)だったり。完成されたダサさは、とてもクセになります。

 

 MVは、HaimとOneohtrix Point Neverがよかった。映画作家と組んだらそりゃかっこいいに決まっているのです。




 

■よかった小説

 

 読んだ順に、村上春樹騎士団長殺し』、ヴァージニア・ウルフ灯台へ』*、大前粟生『私と鰐と妹の部屋』、ナナ・クワメ・アジェイ=ブレニヤー『フライデー・ブラック』、町屋良平『1R1分34秒』、コルソン・ホワイトヘッド『地下鉄道』、山下澄人『小鳥、来る』*、カルメン・マリア・マチャド『彼女の体とその他の断片』、ハン・ガン『すべての、白いものたちの』、スタニスワフ・レムソラリス』、ガルシア=マルケスコレラの時代の愛』、ハーマン・メルヴィル『白鯨』*、リチャード・パワーズ『舞踏会へ向かう三人の農夫』*、ブライアン・エヴンソン『ウインドアイ』、ディーノ・ブッツァーティタタール人の砂漠』、ブルース・チャトウィンパタゴニア』、ロベルト・ボラーニョ『野生の探偵たち』*、ジャネット・フレイム『潟湖』がよかったです。「*」をつけた本は特によかった。

 2020年の、というか、2021年も続けていきたいテーマとして「積ん読消化」というのがあって、なんとなく長編を読む機会が多かったです。長編って、読み終えたときにクるものは一入なのですが、なにせ長い。長いから、積む。積まれた長編の側も「まあ俺のことはそりゃ積むわな」という顔をしているので積むこと自体にはなんの問題もないのですが、積んでしまっていることで読めていない、ただその一点のみが心に引っかかる。なので、「積ん読消化」というのをテーマに掲げていたわけです。

 それでもって、いざ読みはじめるととんでもなくおもしろい。よき長編小説にはよき長編小説のリズムやグルーヴ感というものがあって、最初のページに目を通せば、そのあとはもう半ば自動的に最後までページをめくりつづけられるようになっているのです。特に『白鯨』のおもしろさには驚かされました。すべてが大げさすぎるコメディ。途中でひたすらに並べ立てられる「鯨学」の章も、そういうお笑いとして読み進められる、というか、「“すべてを大真面目に大げさに書く”というお笑い」こそメルヴィルがやりたかったことなんじゃないのこれ?という気もしてきて、その冗長さを楽しむことができました。『白鯨』がほんとうにそういうお笑いをやりたかった小説なのかどうかはともかくとして、長編小説というのはどれも、作者がやりたいことがひとつあって、それを達成するがために書き上げられるものなんじゃないか、という気がしています。たとえば『舞踏会へ向かう三人の農夫』だったら、それは「1914年から始まった20世紀という時代を、マクロにミクロに、縦横無尽に語りなおす」ということかもしれないし、『野生の探偵たち』は「ありえたかもしれない、いたかもしれない詩人たちを現前させる」という試みだったのかもしれない。そしてそれは、その結果としてできあがった小説を読む僕たちを前に、大なり小なり達成され、僕たちの魂を震わせる、というわけです。2021年も長編小説をいくつかは読めるといいな。

 山下澄人の『小鳥、来る』は、時間も視点も自在に行き来する山下澄人の文章が、現時点での頂点に達したと思わせる小説で、読みながらすげ~となりました。このひとの文章って、そう、まさに子どもの視点なのかもしれない。話の途中で、場所も視点も違うところに脱線して、本線に戻ってこないまま話が終わる、みたいな。あと、『タタール人の砂漠』は単純に寓話として刺さったのと、ちょうど見ていたハガレンのアニメのなかの北端の砦の雰囲気が、物語のなかの砦の姿とオーバーラップしたのでとてもよかったです。大前粟生『私と鰐と妹の部屋』は、短編小説≒漫才、という可能性に気づかせてくれた超キュートな短編集です。



■よかった漫画

 

 漫画は少しずつ読む数を増やしていければと思っています。漫画には漫画にしかできない表現があり、ストーリーももちろん大事ですが、個人的には、その漫画ならではの表現の部分に惹かれて読んでいます。2020年に読んだなかでよかった漫画は、島田虎之介『ロボ・サピエンス前史』・『ラストワルツ』、近藤聡乃『ニューヨークで考え中』、あずまきよひこよつばと!』、井上雄彦SLAM DUNK』(途中です)、INA『牛乳配達DIARY』、西村ツチカ『北極百貨店のコンシェルジュさん』、大島弓子『ダリアの帯』、浦沢直樹BILLY BAT』(これまた途中)でした。見開き絵や大ゴマ(というらしいですね)のすごさ、とか、線だけで伝えることのすごさ、とか、まだまだこれからですが、語れるようになったら楽しいだろうなあと思っているところです。お付き合いしている方は漫画をけっこう読まれる方なので、師と仰いで学んでいきたいです。あとは、『A子さんの恋人』が家に全巻揃った状態で積ん読になっている、というかなり贅沢なことをしてしまっているので、2021年はさっそく読んでいきたいと思います。



■よかった映画

 

 2020年よかった映画10選、

 

  『フォードvsフェラーリ

  『ストーリー・オブ・マイライフ』

  『スパイの妻』

  『パラサイト』

  『レ・ミゼラブル

  『ヴィタリナ』

  『燃ゆる女の肖像』

  『はちどり』

  『ジョジョ・ラビット』

  『私をくいとめて』

 

です。

 端的に、いちばん手に汗握った『フォードvsフェラーリ』が1位でした。まっすぐ“男の世界”を描いた映画なのですが、そうそう、こういういいところもあるよね、と再認識できたような気がします。喧嘩する男たちを見て「やれやれ」する妻の描き方はあれでいいのかな?とも思いましたが……。

 年の瀬に観た『私をくいとめて』がすごくよくて、ランクインしてきました。エピソードの羅列ではあるし、演出も好き放題すぎるきらいはあるのだけど、ひとつひとつしっかり揺さぶってくるのと、のんのすごさでぜんぶプラスになってました、のん、すごいな~。

 2021年はもっと観たいね。

 以上です。