2019年よかったもの

 2019年よかったものを振り返ってゆきます。なにより、自分のために必要だと気づいた……

 

■よかった映画

 新旧含めてよかった映画、観た順で『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』、『バーニング 劇場版』*、『ファニーとアレクサンデル』*、『フェリーニのアマルコルド』、『スパイダーマン:スパイダーバース』*、『運び屋』*、『ワイルドツアー』*、『ハイ・ライフ』、『あみこ』*、『わたしたちの家』*、『聖なるもの』、『7月の物語』、『旅のおわり世界のはじまり』、『COLD WAR あの歌、2つの心』、『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』、『さらば愛しきアウトロー』、『サマーフィーリング』*、『海獣の子供』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』*、『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』、『アド・アストラ』*、『ジョーカー』、『サタンタンゴ』*、『象は静かに座っている』、『わたしは光をにぎっている』、『マリッジ・ストーリー』*です。*をつけた映画は特に好きだったものです。

 以下、ひと言コメントです。

 映画体験としてよかったのは、5/2の新文芸坐オールナイトです。日本の新鋭監督の作品をラインナップした回で、特に『あみこ』がよかった。

 12月に『サタンタンゴ』を観た日のことが忘れられません。イメージ・フォーラムの固めの座席で、よく7時間も耐えられたものです。ぜったい忘れないだろうな。降りやむことのない雨、歩いても歩いても終わりのない閉塞感、ただ飲んだくれて踊り、やがてやってきた「救世主」にすがることしかできない人びと。ちょいちょい寝てしまったけど、はっと目を覚ましてもまだ同じシーンが続いてる。驚異的な長回しからは、画面のなかの人びとが “そこにいる” 感触が立ち上がってくる。おもしろいのは、観てるこっちもだんだん長回しのテンションに同期してくるような心地がしてくること。たとえば、冴えない男が荷造りしてるシーンなんてふつう描かれないけど、サタンタンゴではそれをすべて映す。たとえば、ひとが歩いてるカットが始まったら、その姿がはるか遠く、豆粒のように小さくなるまで終わらない。ひとつひとつのカットが長く続くことへのある種の信頼感みたいなものが生まれてくることで、そこに映っているなんでもない物ごとに目がいくようになって、そこにある世界への解像度が上がる。そこにいる人びとの一挙手一投足が目に刻まれる。その分、どこにも行くことのできないやるせなさが沁みる。すごい映画でした。

 三宅唱監督の『ワイルドツアー』は、映画そのもののみずみずしさもそうだけど、映画より前に見ていた同監督のインスタレーション展示『ワールドツアー』との相乗効果みたいなものがほんとうに素晴らしかった。

 『マリッジ・ストーリー』、映画館で観たほうがよかったかもしれないな。さいきん、アダム・ドライバーが奇妙な状況に陥っているのを見るのが好きです。あのデカさのひとが、奇妙な状況に陥って困り顔を浮かべている姿、それだけで楽しくなってきます。こないだの『スター・ウォーズ』の冒頭5分くらい、アダム・ドライバーが無言であちこちに移動する映像だったんですけど、それだけでちょっと笑ってしまった。あと、ついこないだの『テリー・ギリアムドン・キホーテ』でも最高に奇妙な状況に陥っていてよかった。あ、『スター・ウォーズ』と『ドン・キホーテ』は2020年の話ですね。

 

■よかった読み物

 新旧含めてよかった読み物、だいたい読んだ順で、多和田葉子『飛魂』、panpanya『足摺り水族館』『枕魚』、ミランダ・ジュライ『最初の悪い男』*、朝吹真理子『きことわ』*『流跡』『TIMELESS』*、ミシェル・ウエルベック服従』、伊藤計劃虐殺器官』、大島弓子『バナナブレッドのプディング』*、舞城王太郎『短篇五芒星』、村上春樹柴田元幸『翻訳夜話2 サリンジャー戦記』、今村夏子『こちらあみ子』、滝口悠生『死んでいない者』、東浩紀『ゲンロン0 観光客の哲学』*、町屋良平『青が破れる』、山下澄人『鳥の会議』*『砂漠ダンス』『しんせかい』『緑のさる』『ギッちょん』*、村上春樹1Q84』*、アメリア・グレイ『AM/PM』*、川上未映子『ヘヴン』*『夏物語』、オカヤイヅミ『ものするひと』、庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』、岸政彦『断片的なものの社会学』、森泉岳土『ハルはめぐりて』*、夏目漱石『坑夫』*、三浦哲哉『『ハッピーアワー』論』*、アントニオ・タブッキ『遠い水平線』、保坂和志『プレーンソング』『カンバセイション・ピース』*『カフカ式練習帳』*『書きあぐねている人のための小説入門』、鶴谷香央理『メタモルフォーゼの縁側』*、高山羽根子『オブジェクタム』、奥田亜紀子『心臓』*、大橋裕之『シティライツ』*、高野文子『棒がいっぽん』*『るきさん』『黄色い本』、佐藤泰志きみの鳥はうたえる』、フアン・ルルフォ『ペドロ・パラモ』*、エイモス・チュツオーラ『やし酒飲み』*、植田りょうたろう『はなちゃんと、世界のかたち』、レベッカ・ブラウン『若かった日々』、エイドリアン・トミネ『サマーブロンド』『キリング・アンド・ダイング』*、フランチェスカ・リア=ブロック『"少女神"第9号』、ニック・ドルナソ『サブリナ』、田島列島『ごあいさつ』、石黒正数ネムルバカ』、西村ツチカ『アイスバーン』、山里亮太『天才はあきらめた』、レイチェル・ギーザ『ボーイズ 男の子はなぜ「男らしく」育つのか』、ティリー・ウォルデン『スピン』、テッド・チャン『息吹』*です。

 2019年はけっこう本に興味が向いていた一年で、いろんなものを読みました。個人的には、山下澄人保坂和志に出会ったのはけっこう大きかった。

 読んでいていちばん楽しかった本は、エイモス・チュツオーラ『やし酒飲み』です。RPGゲームになったら、ぜったいに買う。

 

■よかった音楽

 新譜でよかったもの、リリース順で、というか僕のApple Musicのライブラリに追加した順で、James Blake*、Sharon Van Etten、Deerhunter、Julian Lynch、Toro y Moi*、Beirut*、Homeshake*、Yves Jarvis*、Nicholas Britell、Little Simz、Solange*、柴田聡子*、さとうもか、Helladusty、Billie Eilish、ミツメ*、Anderson Paak.、Julia Jacklin、Gus Dapperton、Kevin Abstract*、Christian Alexander、Matt Martians、Kelsey Lu、Vampire Weekend*、Big Thief*、never young beachMac Demarco、Jamila Woods、Tyler, the Creator*、王舟、Steve Lacy*、Faye Webster*、東郷 清丸、ゆるふわギャング、MIKE、Kate Bollinger、Thom Yorke*、Daniel Caesar*、Weyes Blood、北里彰久*、KAINA、Blood Orange*、Cuco*、Hi'Spec*、Clairo*、Bon Iver*、Taylor Mcferrin、Ross from Friends、BROCKHAMPTON*、Whitney*、Salami Rose Joe Louis、Chinatown Slalom、Ginger Root、Sandro Perri、Santi、(Sandy) Alex G*、Men I Trust、JPEGMAFIA*、カネコアヤノ、優河、Cate le Bon、Wilco*、Kim Gordon、Slow Hollows、Rex Orange County、Jack Larson*、Kanye West、Earl Sweatshirt、Mndsgn、シャムキャッツ*、Jadasea、Winona Forever、FKA twigs、Matt Maltese*、Vegyn*、小沢健二、Tei Shi、KAYTRANADA、Danny Brown、小袋成彬*、Lana del Reyです。アルバムタイトルは、たいへんなので省略します。

 個人的な年間ベストアルバム、諸説ありますが、意外とJames Blakeなんじゃないの、という気がしています。

 あとは、このほかで曲単位だと『スパイダーマン:スパイダーバース』で使われていた”Sunflower”がけっこう好きでした。Post Malone、声がカッコいいんですよね。

 

 なんとなくですが、僕のなかの指標として、新作だけじゃなく旧作も掘れていると時間的・空間的余裕があるという証で、逆に新作しか追えていないときはそんなに余裕がないという証だという感じがあります。それでいうと、映画や本に関しては比較的余裕があって、音楽に関してはあまり余裕がなかった年でした。というか、音楽に関しては年々余裕がなくなってきている気がして、さいきんではいい音楽がリリースされる間隔があまりに短く、そのこと自体は世界にとってよいことのはずなのだけれど、僕個人としてはそれらを受け止めきることができず、すくってはこぼし、すくってはこぼすうちに残酷に時は過ぎていきます。せっかく好きになったそれらの作品が僕のなかで見失われないようにと、せめてこうやって備忘録をつけているわけですが、でもけっきょく次々と新作が出てくる日々のなかで備忘録に記されたことにかまっている暇もない。いちいち聴き返したりしている時間もない。しかも、備忘録に書かないという選択をした作品たちについては、もはやすくい上げる手段もないままに忘れていってしまうのかと思うと、とっても悲しいのです。そもそも、映画だってもっと観たいし、本だってもっと読みたいし。展示とかだってもっと行けたらいいなと思うし、演劇だって見てみたい。無限にきいていたいし、みていたいし、よんでいたい。僕という有限性のなかで、世界に無限に存在するいいものに対峙していく、そのバランスをまだ探っている途中なのかもしれません。

 

■そのほかによかったもの

 時の流れに逆らえず、何もかも忘れてしまいました……